2019年2月22日

Reading Weekと読書の話

By Saaya


アルバータ大学を含め北米や欧州の大学には、Reading Weekと呼ばれる期間があります。

Reading Weekとは、学期の中間休みにあたるもので、講義はなく、中間テストや期末テストに向けて自習したり、文字通り読書をして過ごせる期間です。
また、課題やテスト勉強が山場を迎え、ストレスが溜まりがちになる学期の中間に休みを設けることで、学生たちのメンタルヘルスやウェルビーイングを保つ役割も果たしています。
アルバータ大学では、Fall termとWinter termに1回ずつ1週間ほどあり、2月中旬の今の時期はちょうどWinter termのReading Weekです。帰省したり旅行に出かける友達もいますが、私は、まだいくつか中間テストが残っているのでそれに向け復習、そして息抜きに本を読んで過ごしています。あとは、友達と少し遠出したところにあるレストランに行って食事をしたり。



勉強して息抜きに読書・・・ ・ 模範的な学生すぎやしないかい?

書きながら自分でもちょっと笑ってしまったのですが、実際にそう過ごしています。
ただ、今までずっとそうだったのかと聞かれたら、答えは、Noです。

勉強がひと段落着くと、何か用があるわけでもないのにスマホを手に取る。SNSを開いて適当にスクロールする。何か面白い動画ないかな〜と動画サイトを開く。気づけば1時間経っていて、「もう1時間経ったのか。。そろそろ勉強再開しなきゃな」と勉強机に戻る。
1日の最後に触れるのもスマホ、朝起きて一番最初に触れるのもスマホ。
そんな日々が当たり前でした。


もともと“ザ・読書家”という感じではなかったものの、小さい頃から家にたくさん本が置いてあり、本はよく読んでいたほうでした。
振り返ると、中学校高学年になり、初めてのスマホを買ってもらったあたりから段々と本を読む時間が減っていったのかなと思います。マレーシアに住んでいた当時15、6歳の私に、邦楽などの日本のエンタメに触れられる機会を与えてくれたのがスマホでした。
ある歌手のファンになり、映像を観たり、Twitterで同じ話題で盛り上がる、そこに娯楽を感じるようになっていました。今、その過去の自分を振り返った時、そこに後悔は全くなくて、素直に楽しかったと言えます。当時の自分にとってのモチベーションでもありました。


でも、人間には次のステップに進むべき瞬間があるんですね。
去年9月、その歌手は芸能界を引退し、私はそれを機に今までの自分の時間の使い方について考えるようになりました。


”勉強がひと段落着くと、何か用があるわけでもないのにスマホを手に取る。SNSを開いて適当にスクロールする。何か面白い動画ないかな〜と動画サイトを開く。気づけば1時間経っていて、「もう1時間経ったのか。。そろそろ勉強再開しなきゃな」と勉強机に戻る。1日の最後に触れるのもスマホ、朝起きて一番最初に触れるのもスマホ“


これでいいのだろうか?もちろん学生として勉強はしているし課題もきちんとこなしている、成績も悪くはない。
でも、常に何かに追われているような感覚や慌ただしさを感じるのはどうしてなんだろう?
もう少し心に余裕を持って、時間の流れをゆっくりと感じることは出来ないものなんだろうか?


自分の人生をもう少しだけ丁寧に生きてみよう。それをするにはどうしたらいいのだろう? 色々な人の生活が、情報が、忙しなく溢れているSNSから少し離脱してみよう。
その代わりに、もっと自分との時間を作ったらどうだろう。
そうやって考えを巡らせて、たどり着いたのが本を読むことでした。



発信デバイスを持たない紙の本を読む行為は、今や「瞑想」や「座禅」に近い儀式になってきていると感じます。インターネットの普及はわたしたちから「孤独でいる機会」を奪いましたが、紙の本を開けばいつでも、「精神と時の部屋」のような、自分と向き合う時間は作れるとおもうのです。

あの高円寺のユニットバスで、何もかもを欲しがっていた より



今年1月初めに読んだ、たらればさんというある編集者の方が書かれていた記事からの引用です。
本を読むことで得られる自分と向き合う時間。
今の自分に必要な時間は、これだ。そう思いました。
忙しい時こそ、1時間の息抜きとして本を開く。同じ1時間なのに、画面をスクロールして過ごすそれとは、時間の流れの速度がまったく違うことに驚きます。
そして思うのは、やっぱり本を読むのって楽しい。


小説、自己啓発、ビジネス本。読みたい本がどんどんと出てきます。


海外発送料金がかかるため、日本の書籍は、iPadにインストールしたKindleのアプリで読むことが多かったのですがやっぱりタブレット端末は本を読む為に作られていないので、読書にはあまり適していないんですよね。この機会にKindle Paperwhiteを買いたいなと思いながらも、それなりなお値段するものなので買うのを躊躇していたんですが、Reading Week直前、たまたまAmazonを開くとバレンタインデーセールをしていて定価から2割引‥





Kindle Paperwhite買いました。


このReading Week、友達と食事に向かう時、ジャケットのポケットに入っているのはスマホじゃなくてKindleです。バスの中、見ているのはスマホの画面じゃなくKindle本。


前よりももう少しだけ本を沢山読んでみる。
小さなことだけど、自分自身に変化が感じられ、とても新鮮な気分です。




2019年2月9日

自分の色を知る

By Saaya



「今年の抱負は、今まで以上に沢山考えること。
もっと自分を知る努力をする1年にしていきたい」



1月初め、Instagramに投稿した写真につけたキャプション。



中学、高校と一番好きだった科目は生物学。
ゆくゆくは医学系の道に進めたら素敵だよなぁ、、そんな密かな憧れを抱きながらアルバータ大学の理学部生物学科に入学したのが2017年9月。

それから1年とちょっと、今の専攻は、統計学と経済学。


自分なりに色々考え、お母さんにも相談して選んだこと。
だけど、本当にこれで良かったのかなぁなんてちょっぴり不安になることがあったり・・
色んなことを考慮して選んだけど、それは果たして
“好き”なことだったから選んだのか、、
“やりたいこと”だったから選んだのか、、
そんなことを自問自答していると、あることが頭に浮かんだ。



― 自分のことをあんまり知らない




そのことを認識した途端、押し寄せてきた焦燥感....




もっと自分を知る努力をしよう。






そんな漠然とした目標を立てた冬休み、


具体的に何から始めたらいいのか分からなかったから、その日の振り返りを記入する欄があって日記としても使えるスケジュール帳をAmazonでポチっと、、

またある日は、よく相談に乗ってもらっている人生の先輩かつ大好きな友達のSさんと電話をした。そうしたら、「読んでみて」と色んなブログ記事や本をお勧めしてもらえたり、、

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世の中は思っているより悪くないというか、うまく出来ているもので、こうやって能動的に動いていると、同時に偶然とは思えないほどいいタイミングでいい機会が巡ってくる。



私にとってそれは、学生として一番身近な存在である大学での講義だった。



選択で取れる単位がまだ少しあったから、高校で少しかじった程度だった心理学をもうちょっと勉強してみようという理由で選んだ社会心理学のコース。

そのコース一番最初の講義のテーマが、


“The Self in a Social World”
『社会における自己』


だった。




タイミング良すぎでは?!とウキウキしながら受けたその講義で一番印象に残ったのが、“Self-concept”という概念。

“Self-concept”、自己概念とは、一言でいうと「自らが抱く『自己』に関する知識や印象」。


自分は、どんな性格なのか、どんな能力があるのか、どんな身体的特徴を持っているのか、目標、役割、そんな自分自身のありとあらゆる側面に関する知識のことを指し、自己観察・内省(Introspection)、自伝的記憶(Autobiographical memories)、他者(の影響/との比較)、文化など多方面から形成されていくものなのだとか。


ただ、私たちのなかに作られていくこの「自己概念」、必ずしも完全とは言えないみたい。
というのも、それを形成していく自己観察や記憶の過程で既に色んなバイアスやエラーが生じていて、自分たちの中にある自己の情報は、私たちが思っているほど当てにならないというのがいくつかの研究でわかっていることらしい


"Yet sometimes we think we know, but our inside information is wrong" (Myers, Jordan, Smith, & Spencer, 2018)

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リーディングのアサイメントを終えたあと、この自己観察や自伝的記憶に生じるエラーについてもっと知りたいと思い、教科書に載っていたTimothy D. Wilsonという社会心理学者が書いた自己概念に関する研究批評を読んでみることに。



 自己観察する時、なぜ私たちは“間違い”を起こすのか―


私たちが内面に意識を向ける時、それは「観察」ではなく「解釈」になっていて、しかもそのことに私たちは気づいていないことが多い。これは、Naïve Realism (素朴実在論)と言われるもので、自分の眼に映るままの姿で世界が存在していて、そこに自分の解釈が加わっているという自覚がないこと。


もっと簡潔に言うならば、思考のプロセスよりも思考の結果の方に意識が向く傾向が多いにあるということ。自分の解釈に色付けされたものなのに、事実の観察として捉えてしまう。俗にいう思い込みってやつ。


だから、どれだけ自分は自分のことを分かっていると思っていても、それが正しい情報なのかは疑わしいよね‥というのが自己を研究する社会心理学者たちの見解の一つでもあるよう。


私の個人的な見解を付け加えるとすれば、たとえそれが不確かなものだったとしても、その思い込みが自分を豊かにしてくれるものであればいいんじゃないかなと思うし、「思い込みによって見えてないもうひとりの自分がいる」ということを心の片隅にとどめておけることが出来れば、「私にはこれは向いていない」と確信していることでも「いや、もしかしたらそれはただの思いこみで、実は向いていたりして‥」と自分自身が確信していることに疑問を投げかけ、新しいことに挑戦きっかけになり得ると思う。



Timothy D. Wilsonの著書の題名を借りると、“Strangers to Ourselves” ― 人はみんな自分自身が見知らぬ人で、思っているよりも自分のことを分かっていないのかもしれない。


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そんなことを実感することが最近あった。





1年ほど前にSさんが教えてくれたPantoneという会社が提供しているCOLORSTROLOGYという占星術、数占い、色彩理論を用いて導き出すその人の性格や個性と一緒にバースデーカラーを教えてくれるサービス。


そこに書いてあった


“Many of you have a strong calling to communicate to large audiences ... Sharing ideas with others, having fun and staying young at heart are some of the ways to harness your magical abilities that you have within”

という言葉を読んだ約1年前の私は、Sさんにこんなことを言っていた。




『沢山の人の前で話すことが合ってるとか
絶対ない
一番苦手』


それから1年経った今。


ふとこの時の会話を思い出した。そして自分を見てみた。


そこには、サークルを立ち上げ、ミーティングで自分の考えていることやアイディアなどをメンバー相手に話している自分がいて、

ブログにこうやって誰かに伝えたいと思うことを文字に起こして発信もしている。


そして何よりも、「人と繋がりを持つ」ということをとても楽しんでいる自分がいる。



一年前の自分が「絶対にない」と切り離していたことをしている今の自分を見て、
2年後、5年後、10年後、自分はどんな新しい自分を発見しているんだろう?と今までは「わからないから怖い」と思っていたことが「わからないからちょっと楽しみじゃん」に変わりつつある。




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2019年2月2日

人生の糧を探して

By Saaya



昨年9月のテニス全米オープンで日本勢初の優勝を果たしたのもまだ記憶に新しいなか、先週末には全豪オープンを制覇した大坂なおみ選手。

国内外のメディアで沢山取り上げられていて、テニスにあまり精通していない私にも「どれだけすごい偉業だったのか」伝わってくる。 


アスリート、歌手、芸術家、起業家 ― 世界中に様々な分野で偉業を成し遂げる人たちがいて、その功績はメディアを通して日々、私たちに伝えられる。




そんな“ヒーロー”たちの姿を見た時、何を感じ、どんなことを思いますか?







イギリスの週刊新聞The Economistにも大坂なおみ選手の偉業を称える記事が掲載されていた。



the 21-year-old Japanese prodigy won her second consecutive grand slam



Prodigy

天才。     


天才?






“ヒーロー”たちの姿を見た時、何を感じ、どんなことを思うのか。


私は、その人たちが歩んできた道のりを、たゆまぬ努力を、乗り越えてきたであろう沢山の困難や挫折を思い、尊敬の気持ちでいっぱいになる。


なにが彼ら彼女らを突き動かすのだろうか。
挫折の時、どうやってまた立ち上がってきたのだろうか。
この人たちに共通していることはなんなんだろう。

そんなことを考えてみる。

文学の授業で著者の意図を考察せよという問に対して、そのことに何の意味があるというのか、と言う人がいるように、そんなことを考えてどうしたいのかと思う人もいるだろう。

それでも、沢山の人たちを熱狂させ感動させるヒーローたちに共通する「セオリー」を知りたいと思うのだ。

考えることで、今まで見えていなかった新しい景色が見えるようになるように思うから。あと数年もすれば社会に出ていく自分の糧になる何かを見つけることが出来ると思うから。








GRIT - THE POWER OF PASSION and PERSEVERANCE” 

という題名の本を読んだ。

著者はペンシルベニア大学の心理学者、アンジェラ・ダックワース氏。

あらゆる分野で成功を収めた人たちは、どんな人たちだったのか。― 生まれ持った才能以上のなにか 


Grit is passion and perseverance for very long term goals.
Grit is sticking with your future, day in, day out, not just for the week, not just for the month, but years, and working really hard to make that future a reality.
Grit is living life like it's a marathon, not a sprint. - Angela Duckworth 

Gritとは、超長期的目標への情熱と忍耐力。
自らの将来にこだわること。明けても暮れても、その週だけじゃなく、その月だけじゃなく、何年間もの間、その将来を現実のものにするために一生懸命であること。
人生を短距離走ではなく、マラソンであるかのように生きるということ」



プロスイマー、ジャーナリスト、実業家、陶器職人、俳優。
ダックワース氏は、ありとあらゆる分野で功績を残した人たちについて様々な観点から研究し、どの分野のプロフェッショナルたちにも共通するある一つの特徴が“GRIT”であるという結論にたどり着いた。
そして、それは決して「天才」という定義で説明出来るものではないということも。


この著書の中に哲学者ニーチェのある言葉が引用されていた。




"Our vanity, our self-love, promotes the cult of the genius
For if we think of genius as something magical, we are not obligated to compare ourselves and find ourselves lacking To call someone 'divine' means: 'here there is no need to compare'"

我々の虚栄心、自己愛が天才のカルトを作り出すのだ
天才がある種の魔法だと思うことで、己を比べ、己が劣っていると気づかなくて済む。誰かを神性だと考えることは:比べる必要がないということなのだから








ずっと憧れだったセリーナ・ウィリアムズ選手相手に、堂々と戦い、勝利。
それから一年も経たないうちにさらなる進化を遂げて、四大大会2冠を成し遂げ、女子テニス界の頂点にたった大阪なおみ選手。


彼女はきっと、自分より格上の選手たちを「天才」としてじゃなく「努力の結晶」として見てきたのだと思う。そして、自らも情熱と忍耐力を持って、来る日も来る日も練習に励み、自分と向き合ってきたのだと思う。

Prodigy?

違う。

Grit Paragonだ。




アルバータ大学


さて、これからの自分の糧になるなにかは見つかったのか。

もちろん、そんな簡単なことじゃない。
今の自分には、GRITな人間になるためのPASSION、情熱を持って「これだ!」と言えるものはまだ見つかってない。

だから、やりたいことや好きなことが明確な同世代の人たちを前にすると、

怖気づく。

目をそらしたくなる。

この人は才能に溢れている天才なんだと比べることを止めて逃げたくなる。

でもそれと同じくらい、現状に甘んじる自分を見るのは嫌だ。

今の自分が出来るベストな選択。
それは、あと2年半ほどしかない学生生活をPERSERVERANCE、忍耐力を持って、やり抜くことだと確信している。やり抜くこと、それは、ありふれているように見える日常を悲観することなく、そこにある意義を探しながら進んでいくことだと思う。

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今回紹介した本:
アンジェラ・ダックワース氏のTEDトーク
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